- 第35回 ドラフト・ギネス≪缶≫の秘密
- 2006.6.9
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今回はここ数年ますます人気が出てきているギネスビールについて書いてみたいと思います。プレミアムビール全体の市場人気もありますが、ギネスはその中でも特に伸びているのではないでしょうか?
最近はテレビCMや電車の中吊り広告等でも見かけますが、ギネスビールの特徴といったら、なんといってもあのクリーミーな泡でしょう!他のビールは炭酸ガスによってビールの泡が作られますが、ギネスビールは窒素ガスと炭酸ガスが(7:3の割合)で混合されており、あのクリーミーな泡を作り出しているのです。知っていましたか?
ギネスの樽生を置いている飲食店で、あのクリーミーな泡のギネスが飲めるのはわかりますが、家庭で購入が出来るドラフト・ギネス≪缶≫でもあのクリーミーな泡が作れるのは何故だかご存知ですか?
これは缶の中に入っている極小の穴が空いたプラスチック・ボール(直径にして約2cm位!?)によるものなのです。正式にはウィジェット・システムと呼ばれる仕組みが、缶のギネスをグラスに注いでも樽生と同じあの泡が再現出来る秘密なのです。
実際ドラフト・ギネスの缶を開けた事がある方はわかるかと思いますが、缶を開けた瞬間プラスチック・ボールが中で動きまわっているのがわかります。なぜプラスチック・ボールは動き回るのでしょう?
よく「缶を開けた瞬間に中のプラスチック・ボールから窒素ガスが出てあの泡が出来る」といいます(実は私も最近までそう思っていました!)が、本当はビールでビールを泡立てているのです。「え!どういう事?」という声が聞こえてきそうですが、つまり仕組みはこういうことなのです。
缶の中に入れられたプラスチック・ボール(ウィジェット)には小さな穴が開いていて、ビールを缶に詰めた後、缶にふたをする時の圧力で、この穴からボールの中に少量のビールが入り込みます。
そしてビールを飲む時に缶を開けると、缶内の圧力が低下してボールの中に閉じ込められた少量のビールが、ジェット噴流のように飛び出してビールを泡立て泡を巻き起こすのです。実はこれがこのシステムの仕組みだったのです!もっと驚くのはこのシステムの開発プロジェクトには500万ポンド日本円にして、な、なんと約10億円がかけられたというのです。ビックリ!! ただ、イギリスで売られている多くの缶入りエールにこのウィジェットが採用されていて、ギネスはその特許によって開発費の500万ポンドを楽々回収したといいます。もっとも、この装置の発明のおかげでギネスのドラフトが缶で楽しめるようになったのだから、それだけの価値があるという事なのでしょう。それにしてもスゴイ!!
柴田屋酒店 深田良一